2011年4月8日金曜日

スーフィズム

スーフィズム

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スーフィズム(صوفية‎, Sufism)とは、イスラム教神秘主義哲学である。この呼び名は担い手であるスーフィーにイズムをつけたもの。

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概要 [編集]

9世紀から10世紀頃、官僚化したウラマーたちの手によってイスラーム諸学が厳密に体系化され始めた頃、イスラームが日常生活から遊離したことの反発から成立した。形式化したシャリーアを批判し、内面性を重視したスーフィー達は、しばしばウラマーたちの批判の的になった。しかしイスラーム哲学の大家でスーフィーであったガザーリーらの影響により、スーフィズムはイスラム世界において定位置を得るようになる。スーフィズムはその後イスラームの大きな潮流となり、特にインド東南アジアのイスラム化において大きな役割を果たした。
スーフィズムでは禁欲的で厳しい修行を行い、また白い布状の服を身につけて一心不乱に回る、回旋舞踊と呼ばれるものを行ない、神との一体化を求め た。スーフィーは導師の指導の下、決められた修行(マカーマート)を段階的にこなし、準備を進める。最終段階では、雑念を捨て去り一心に神の事をのみ考 え、神と合一したという悟りが訪れるのを待つ。この境地に至った者は、時として聖者に認められ、崇拝の対象となった。この境地をファナー(融合)、バ カー(持続)と言う。
今でもジャラール・ウッディーン・ルーミーが創始したメヴレヴィー教団などがこのスーフィズムを信仰している。しかしトルコ政府はメウレヴィー教団の活動を禁止している。開祖の教えに戻れと主張するイスラーム原理主義の勢いで、異端的な要素(ギリシャ哲学ヒンドゥー教等)の有るスーフィズムは影を潜めている地域もある。一方で、近代市民社会を作り上げるための寛容なイスラーム・リベラルなイスラームの思想の源流として注目されても居る。

神秘階梯 [編集]

  1. 懺悔または回心
  2. 律法遵守
  3. 隠遁
  4. 清貧と禁欲
  5. 心との戦い
  6. 神への絶対的信頼(タワックル)
  7. 融合(ファナー)
  8. 持続(バカー)
聖者

関連文献 [編集]

  • 赤堀雅幸・東長靖・堀川徹編 『イスラームの神秘主義と聖者信仰』 東京大学出版会〈イスラーム地域研究叢書〉7、2005年。
  • 中村廣治郎 『イスラムの宗教思想 ガザーリーとその周辺』 岩波書店、2002年。
  • 中村廣治郎 『ガザーリーの祈祷論 イスラム神秘主義における修行』 大明堂、1982年。
  • 井筒俊彦 『イスラーム思想史 神学・神秘主義・哲学』 中公文庫、1991年、2001年。(初版は岩波書店、1982年)
    • 『井筒俊彦著作集』(全12巻 中央公論社、1992年 - 1993年)にも所収。
  • ファリード・ゥッディーン・ムハンマド・アッタール 『イスラーム神秘主義聖者列伝』 藤井守男訳、国書刊行会、1998年。(立花隆が推薦)
  • イドリース・シャー 『スーフィー 西欧と極東にかくされたイスラームの神秘』 久松重光訳、国書刊行会、2000年。
  • ガザーリー 『誤りから救うもの』 中村廣治郎訳、ちくま学芸文庫、2003年。
  • R.A.ニコルソン 『イスラムの神秘主義 スーフィズム入門』 中村廣治郎訳・解説、平凡社ライブラリー、1996年。(初版は東京新聞出版局〈オリエント選書〉3、1980年)
  • R.A.ニコルソン 『イスラーム神秘主義におけるペルソナの理念』 中村潔訳、人文書院、1981年
  • ラレ・バフティヤル 『スーフィー イスラムの神秘階梯』 竹下政孝訳、平凡社〈イメージの博物誌〉16、1982年。
  • シャイフ・ハーレド・ベントゥネス 『スーフィズム イスラムの心』 中村廣治郎訳、岩波書店、2007年。
  • オリヴァー・リーマン 『イスラム哲学への扉』 中村廣治郎訳、筑摩書房、1988年、ちくま学芸文庫 2002年。

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]

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